
君の痛みなど私の比にならない。
どうせならあの時壊れていたら良かった。
鎖で繋ぎ止めた魂が暴れて、
生々しい傷が外気に触れると泣き叫ぶ。

あの日のことをなんにも知らないまま
世界は呑気に賛美歌を歌っているのです
そのことを哀しみながら
僕はただ一人のために賛美歌を歌っているのです

僕は毎回飛ぶのを見ていました。
それは泣きながらだったり
悟ったように笑いながらだったり
僕の時代から全く進化していなくて
流すような涙もないのに
目頭が熱くなって
癖のように物陰に隠れました。

ただ、自分がそこに居たという事実を知りたい、哀れな人は、
他人の認識でしか自分の存在意義を知り得ないのです。
指の感覚さえ失った、哀れな人。

悲しみは鉄の味がするのです
僕はそれを知っています
喜びは銅の味がするのです
僕はそれも知っています
自慢できることではないのです
僕はそれを知りません
悔しくて唇を噛むと鉄の味がしました

からからから と音を立てて
落ちてゆく星を見ながら
人差し指と中指を 人のようにして
ベッドの手すりを歩かせる
まるで出来損ないのごっこ遊びで
からからから
絡まって落ちてゆく
足下の奈落を永遠だと錯覚して
からからからまって星は落ちる

「物語りとは騙されし者のためにあるのだ。即ち物語りとは物騙りなのだ」

くるくるくると廻つてゐる君の世界よ

あたしが水に浮かんでます
その内あたしは泡になるでしょうから
しっかりと見ててください
夢の中で死んだあなたは綺麗でした
見ていたあたしは醜く泣いていました
あなたが荒れ地に立っています
供物にセヴンスターでは絶対昇天しませんから
もう少し苦いのをください
ただあたしは沈んでいって
あなたはそれを笑っていて
世界はくるくるワルツを踊っていて
太陽はもう見えなくて

溢れる情報のスイッチを切りたい
外を歩くだけで止めどなく流れてくるから
この、耳が要らなかった。
寂しさを文字で埋めようとする
鉛筆はいつまでも踊ってるから
この、手が要らなかった。
愛を探しに画面に食い入る
見えるのは白い骸骨だけだから
この、眼が要らなかった。
自分は酷く矛盾していて
相手も酷く矛盾していて
でも世界は回っているらしい
地球の存在を鼻先で笑った。

虹彩に映る景色の総てを
愛でたいと思いました
しかし、頑張っていると直ぐに
色が無くなるので
私は飽きてしまうのです
その内モノトーンが流行るでしょうと
この間天気予報が言っていましたが
やはりそれも飽きたのか
また色に依存しています
自分たちは擬態出来ますから
血液でさえもファッションなのです

風が身体中をを駆け抜けて
骨までじんときた
鼻をくすぐる桃の匂いが
私をどうしようもない気持ちにさせる
窓から差し込む光は優しくて
遠い空のことなんか知らないように
オーディオの音が呑気な旋律になり
叫び声をかき消していた
――春のころ
わたしはこの国で生きていて
何も知らないふりで過ごしているだろう
所詮私は偽善者なのだから
駅前で彼らを無視することだって出来るはず

みんなはぼくの名前を呼ばない。
ぼくはそんな名前じゃあない。
本当の名前はぼくだけが知っている。
ぼくはぼくに話しかけるときにだけその名前でぼくを呼ぶ。
でもいつか その秘密もなくなるだろうから
ぼくは待っている。
でもいつか その秘密もなくなるだろうから
ぼくはずうっと待っている。
となりの席のくみちゃんがぼくの名前を呼ぶなら
三組のくぼたくんがぼくの名前を呼ぶなら
遠くのいとこのあつし兄ちゃんがぼくの名前を呼ぶなら
きっとぼくはみんなを好きになれるにちがいない。
ぼくはぼくであるために本当の名前を呼ぶ。
きみはきみであるために本当の名前を呼ぶ。
ぼくはずうーっと待っていたんだ。
だれもかれもが ぼくの本当の名前を知るときを。
はやくぼくを見つけにきてちょうだい

視覚
資格
死角
刺客
死、
掻掻掻掻掻掻掻掻
「視覚」

蜂の/羽音/響く
墓参り/不安定な/方法詩
減らされる/引かれる/弾(はじ)かれる
走らされ/酷い/批評を!
秘め/含まない/保守派
蜂の/羽音/響き
蜂の/羽音/雛菊の花
蜂の/羽音/褒め称えよ
蜂の/羽音/膨らんで
本当の/本当を

←